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私がFP(ファイナンシャルプランナー)になった理由

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

{102}第9章 自分の人生(1-4.第三の決心)

夜の十時を過ぎていたと思います。 神戸の叔父夫婦が私に会いに来てくれました。 「いっちゃん、今お父さんの所で話して来たから、あんた一人で暮らしたらいいわ」 義理の叔母からのにわかに信じ難い言葉でした。 「えっ、どういうこと?」 と、訳のわからな…

{101}第9章 自分の人生(1-3.第三の決心)

梅木先生はもう呆れたといった様子で、溜息をついた。 「先生、父を殺すつもりなら、もうとっくに殺していますよ」 「なぜ、殺さなかったのかといえば、殺しても私が損するだけで何の価値もないことがわかっていたからです」と言って、私は苦笑いをした。 「…

{100}第9章 自分の人生(1-2.第三の決心)

私が退院したことを職場の同僚や同級生達が喜んで、私のために食事会を開き誘ってくれました。 書店時代の年長の同僚が職場復帰に際して 『どんなことがあっても休まずに出勤し続けないといけない』と言って へたれの私を励ましていました。 ですから私なり…

{99}第9章 自分の人生(1-1.第三の決心)

八月の下旬、まだまだ残暑も厳しい頃、 私は梅木先生のカウンセリングを受けていた。 通り一遍の挨拶を終えた後「先生、私一人暮らしを始めました!」と、言った。 私のこのセンセーショナルな報告にこれ以上驚きを隠せないといった表情で「本当に凄い、精神…

{98}コーヒーブレイク(第8章 病気)

週1回のホットヨガをもう20年近く続けている。 心身のストレス緩和のために始めたホットヨガ。 体の硬い私ではあるが、【継続は力なり】でそれなりに出来るポーズも増えた。 全身汗まみれ(下着もビチョビチョ)になることを気にする必要もなく、終わったと…

{97}第8章 病気(4-6.復活)

私は体の回復を素直に喜べない心情をようやく語り終えた。 梅木先生は私の話を黙って頷きながら聞いていた。 「先生、皆は私に『元気になって良かったね』と喜んでも、『よくやったね』とは言ってくれませんでした」 「『頑張れ』と励ましても、『頑張ってる…

{96}第8章 病気(4-5.復活)

一カ月半ぶりの出勤は緊張の中、同僚の驚きと安堵の表情で迎えられました。 職場の業務上、私の病名は周知の事実でしたが、皆変わり果てた姿の私にどう言葉をかけていいものかと躊躇していたことを覚えています。 私の方は、上司に挨拶をしている最中に感極…

{95}第8章 病気(4-4.復活)

今後の治療は抗がん剤の服用をどうするかということになりました。 私の場合、転移は無くても再発リスクが高いので、 当然のことながら、父は『抗がん剤を飲むよう』私に強く言いました。 医師からは 『抗がん剤を飲んだからといって、必ずしも効果が期待で…

{94}第8章 病気(4-3.復活)

私の癌は『目に見えるものはすべて取り切った』と聞いていました。 しかし、『浸潤していたので、恐らく転移しているだろう』と言われていました。 担当医師が病理検査の結果が出たので話しがあると呼びに来ました。 私が『父と一緒に聞かないと・・・』と言…

{93}第8章 病気(4-2.復活)

(今日こそは、何が何でも私を起こして歩かせる) 気でいた看護師の友達は、私の姿を見て拍子抜けしたようでした。 私は(イレウス管だけは二度と御免だ)と思っていました。 ですから、本当に必死のパッチで頑張りました。 看護師が『職場の上司から面会の…

{92}第8章 病気(4-1.復活)

翌朝、様子を見に来たもう一人の担当医師に私は 『管を外して欲しい』と頼みました。 そして、医師から『執刀した担当医が休みであり、今日は無理だ』と言われた時、 またしても私の心は折れたのでした。 後で来た父に、私は涙ながらに『私は(癌になったこ…

{91}第8章 病気(3-6.限界)

外科へ移ってからの私は同室の人達と会話を全くしていませんでした。 挨拶程度はしても、管が邪魔であり疲弊しきった体では、ただただほっておいてもらいたかったのでした。 また、彼女達三人が母と同世代だということも、関わりたくない理由でした。 閉塞し…

{90}第8章 病気(3-5.限界)

もう一人の看護師の友達が言ったように、寝ている間に手術は終わりました。 『高野さん、わかりますか』 看護師の呼びかけに返事をした私は、硬く冷たいベッドの上で寒さの余りガタガタと震えだしました。 『寒い・・・』 毛布を何枚もかけられ体を摩っても…

{89}第8章 病気(3-4.限界)

母方の伯父夫婦は何度も見舞いに来てくれました。 また嬉しいことに、義理の叔母は私のためにパジャマや花を差し入れるだけでなく、『手術の日も来る』と言ってくれました。 私は看護師の友達に 『手術の間、父と一緒に待っていて欲しい』とお願いをしていま…

{88}第8章 病気(3-3.限界)

イレウス管は何重にもテープで鼻に固定されました。 これでは洗面もままならないうえに点滴とのダブルでトイレへ行くことが更に大変になりました。 その後、私は外科病棟へ移されました。 イレウス管が喉を刺激するためか、唾液が溢れて苦しかった。 吐いて…

{87}第8章 病気(3-2.限界)

イレウス管を挿管された私の姿は友達にかなりのショックを与えていたようで、 もう一人いる病棟勤務の長かった看護師の友達は、 『初めての入院であれはきついわ』と言っていたと 後日、私は聞いたのでした。 ずっと絶食だったのでたいした違いではなかった…

{86}第8章 病気(3-1.限界)

嘔吐からほぼ何も食べていないうえに、点滴のため熟睡できないでいた私は体力も気力もぎりぎりの状態でした。 そんな私に追い打ちをかけるように更なる苦しみが待っていました。 私の大腸は直径五センチ大の癌によって、95%塞がれていました。 つまり僅か…

{85}第8章 病気(2-5.衝撃)

午後からは看護師の友達が会いに来てくれました。 私は彼女に『父と自宅に行ってキャッシュカードを探した後、 父と一緒にATMでお金を引き出して来て欲しい』と頼みました。 同時に持って来て欲しい物も。 私は今まで携帯電話を持つことに必要性を感じて…

{84}第8章 病気(2-4.衝撃)

まず、私は母に会ったことで、これまでのことを否が応でも思い出すことになり、 悔しさの余り癌のことを考えずに済んだのでした。 そして、今日、両親に言いたかったことをぶちまけた私は、 (もう死んでも思い残すことは何も無い!) と覚悟を決めることが…

{83}第8章 病気(2-3.衝撃)

父に『通帳や連絡先を書いたものを持って来くるよう』に頼み、 両親には帰ってもらいました。 その後、私は友達二人と職場の上司に癌を知らせるための電話を掛けました。 父ではどうにも頼りにならないので、私にとっては友達が頼みの綱です。 主婦で看護師…

{82}第8章 病気(2-2.衝撃)

人生二度目の驚天動地です。 父には『昨夜、病名を伝えた』と医師は言いました。 更に『一週間後に手術をするため、今から検査を始める』と言われました。 私は質問する間もなく、そのまま車椅子で検査室に向かったのでした。 検査室に向かう途中で、私は見…

{81}第8章 病気(2-1.衝撃)

入院すれば楽になれると思っていた私の願いは叶えられませんでした。 嘔吐から十数日、食事はもちろんのこと、医院での点滴だけでは栄養が足りていなかったことから、私は長時間の点滴をしなければならなくなり、それに伴う尿意のためトイレへ日に何度も行く…

{80}第8章 病気(1-4.我慢)

『動けない』と言う私をおぶって救急車へ運んでくれました。 救急車では『落ち着いてゆっくり呼吸をするよう』に言われましたが上手くできません。ドラマでよく観るビニール袋を当てての呼吸を想像していた私は、紙袋を手渡されてほっとしたのでした。 運ば…

{79}第8章 病気(1-3.我慢)

大腸カメラ検査を受けることを決めた私の状態は最悪でした。 それでも、私は検査のため準備を始めたのでした。 腸内洗浄のための溶液を飲み始めて数十分後、激しい嘔吐が続いたのです。 (このままでは脱水症状になる)と思った私は、クリニックがまだ開いてい…

{78}第8章 病気(1-2.我慢)

血液検査の結果、 『ホルモン量は正常値であり、生理が止まっている原因は他にある』 といわれた私は、伝え忘れていた薬剤名を婦人科医に言ったのです。 伝えた途端、原因はこの薬であり、 『医者でも副作用についてよくわかっていないことがある』 と婦人科…

{77}第8章 病気(1-1.我慢)

五カ月後、私は再び梅木先生の元を訪ねた。 「どうしたのですか?」痩せ細った私を見るなり、先生は開口一番に言った。 「予約があったので何事かと思っていたのですよ」と、先生は心配そうに私に尋ねた。 「先生、実は私、大腸ガンの手術をしたんです」 「…

{76}コーヒーブレイク(第7章 迷い道)

私の趣味の一つにアロマテラピーがある。 興味を持ったきっかけはストレス緩和に役立つと思ったから。 何でも、香りはダイレクトに脳へ働きかけ効果バツグンらしい。 手始めにアロマポット、聞いたことのあるラベンダーとローズマリーの精油を買った。 暖め…

{75}第7章 迷い道(5-5.重圧の果て)

カウンセリングは終えたが 『自分の本当に望む人生を生きていない』という、根本的な問題は解決していない。 正直なところ、今の自分が解決できるとは到底思えない。 しかし、私はカウンセリングを受けたことで、色々なことに気付けた。 今まで、私は断片的…

{74}第7章 迷い道(5-4.重圧の果て)

そして、先生は更に続けて言った。 「あなたは、自分がこうなったことを決して人のせいにしていない」 「こんなにも自分が辛い思いをしていることを誰かのせいにしてカウンセリングを受ける人達がほとんどなのに、あなたは誰の責任にもしないで、ただ起こっ…

{73}第7章 迷い道(5-3.重圧の果て)

今更、『自分の人生を生きていない』と言われたところで 私にはなすすべもなかった。 それでも、私は自分で答を求めるために、梅木先生に訊いたのだった。 「以前、年長の書店時代の同僚から 『私がしっかりすればするほど親を駄目にした』 と言われたことが…