{87}第8章 病気(3-2.限界)
イレウス管を挿管された私の姿は友達にかなりのショックを与えていたようで、
もう一人いる病棟勤務の長かった看護師の友達は、
『初めての入院であれはきついわ』と言っていたと
後日、私は聞いたのでした。
ずっと絶食だったのでたいした違いではなかったのですが、腸閉塞のため絶飲絶食になり口を湿らすことだけが許されました。
私に拒絶され、途方に暮れた母が自分の弟妹に私の入院を知らせたので、週末に叔父や叔母が夫婦で見舞いに来てくれました。
久しぶりに会えたこともあり話は尽きませんが、連日の長時間の応対に私はヘトヘトでした。
おまけに管が邪魔で会話もままならない状態です。
それでも私は精一杯、皆へ『頑張る』と言って気丈に振る舞っていたのでした。
私の状態は悪化するばかりで、もっと長いイレウス管に替える処置が施されることになりました。
今度は検査室で数人の医師の見守る中、挿管が行われたのです。
入れ替えるためとは言え、一瞬であっても管を抜き取られた時の解放感といったら言葉では言い表せません。
それが、一転してまたあの苦しみに耐えなければならないなんて、
本当にぞっとします。
モニターを見ながらの挿管だったと思います。
私は苦しくて余りよく覚えていなかったのですが、
担当医の姿を見つけて『先生を恨んでやる』と言ったことだけは覚えていました。
救急で運ばれた時に、
(もっとちゃんと診ていてくれたなら、これほどまでに苦しまなくて済んだはずだ)との思いが言葉になったのでした。
挿管の処置をしていた別の医師に私は戒められ、すぐに言ったことを取り消したのですが、言ったことに後悔はありませんでした。