{83}第8章 病気(2-3.衝撃)
父に『通帳や連絡先を書いたものを持って来くるよう』に頼み、
両親には帰ってもらいました。
その後、私は友達二人と職場の上司に癌を知らせるための電話を掛けました。
父ではどうにも頼りにならないので、私にとっては友達が頼みの綱です。
主婦で看護師の友達にはすぐに連絡がついたので、
『入院中いろいろなことで助けて欲しい』とお願いして、
仕事で帰宅の遅い友達へはお母さんに伝言を頼んだのでした。
職場の上司に癌のことを
『まだ、余命何年とか具体的には聞いていないんです』
と何気なく言ったところ、
いつものように冗談で返してくれると思っていた私は、
『そうか、大変だな・・・』と、
上司の神妙な口ぶりに癌という病の重さを感じたのでした。
私は今朝の告知からのバタバタで、未だに自分が癌であることを実感できないでいたのでした。
夜、お母さんに伝言を頼んだ友達が予定を変更して会いに来てくれました。
私の痩せた姿に驚いてはいましたが、
落ち着いて話す私の態度に安心したようでした。
社会保険労務士である彼女から『健康保険の手続きなど、何でも頼んでくれて構わない』と言ってもらえたことに、私は心から友達の存在をありがたいと思いました。
父が母を病院に連れてきたのは、
私の癌を聞かされてパニックになった父が田舎の伯父に電話した時に、
叔父から『実の母親だから一応知らせておいた方が良い』と言われたからでした。
(余計なことをしてくれて、本当に有難迷惑だ)と正直思いました。
しかし、これが結果的に今後の私を救ってくれることになるとは、
当時の私は想像できませんでした。