{136}最終章 おひとりさま(4-4.母 逝く)
九月に入ったある日
母が亡くなったと
義理の叔母が知らせてくれた。
『特養へ最後に(母に)会いにくるのなら、手配するので娘さんに聞いて欲しい』と
行政書士からの言づてもあった。
「いっちゃん、どないする?」
「私らが(特養へ)行ったら余計な手間をかけさせて申し訳ないから、火葬前に顔が見られたらそれでいい」
「わかった。そう言うてみるわ」
死とは突然であって、
こちらの都合はお構いなしであるとつくづく思う。
そう・・・
私は母と対峙する心の準備が未だにできていなかった。
直ぐに義理の叔母から電話があった。
「火葬場近くにあるお寺の待合所を借りて30分ほどお別れする時間があるって」
「後で、場所と時間を知らせてくれるって」
「わかったわ。ありがとう」と言って電話を切った。
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当日は私と叔父夫婦が母の従姉の家に集まり一緒に車で寺に向かった。
寺の待合所では葬儀社の人が私達の到着を待っていた。
私が「お骨を持ち帰りたい」と言うと
「喉ぼとけ用の骨壺の用意しかなく、別料金になる」との説明。
その場で支払って骨壺をあらたに用意してもらったのだった。
しばらくして、お棺が運ばれてきた。
蓋を開けてもらい中を見ると、穏やかな顔で目を閉じ横たわる母がいた。
最期まで愛用していた品々も一緒に納められ、その中にミッキーマウスのぬいぐるみがあった。
(子供のようになった母がずっと抱きしめていたのだろうか)と想像しては
切なさでいっぱいになった。