{88}第8章 病気(3-3.限界)
イレウス管は何重にもテープで鼻に固定されました。
これでは洗面もままならないうえに点滴とのダブルでトイレへ行くことが更に大変になりました。
その後、私は外科病棟へ移されました。
イレウス管が喉を刺激するためか、唾液が溢れて苦しかった。
吐いても吐いても、唾液は止まらず出つづけました。
また、腹部の膨張から胸が圧迫されて息もできません。
私は絶食には我慢できますが、眠れないことには我慢できませんでした。
痛みには耐えられますが、苦しみには耐えられませんでした。
手術が待ち遠しかったです。
この苦しみから楽になれるなら、
たとえ(手術中に死んでもかまわない)とまで思い詰めていました。
私は手術を担当してくれる外科医師が最初は苦手でした。
どうしてかと言うと、余りにも身も蓋もないといった口振りで、励ますより突き放された感じがしたのでした。
私の性格から大丈夫だと思ったのか、はっきりと現実を突き付けて、決して楽観的な気持ちにさせてくれませんでした。
また、手術前の説明も淡々と事務的に進められました。
最終的には、患者の誤解を恐れてのリスク回避のためといった感じでした。
私は
『実際に手術で開腹しなければわからないから、
あれこれ今話しても仕方がないと言うことですね』
と答えたのでした。
そして、
『具体的な時間(余命)について教えて欲しいです』
とお願いしたのです。
ドラマのような患者に寄り添い、励ます医師を期待しても無駄だと、私は悟りました。
私が医師に不安を訴えることは決してありませんでした。