{86}第8章 病気(3-1.限界)
嘔吐からほぼ何も食べていないうえに、点滴のため熟睡できないでいた私は体力も気力もぎりぎりの状態でした。
そんな私に追い打ちをかけるように更なる苦しみが待っていました。
私の大腸は直径五センチ大の癌によって、95%塞がれていました。
つまり僅か5%の隙間で動いていたのでした。
このおかげで腸閉塞の発見が遅れたかと思うと悲しくなりました。
消灯時間を過ぎて、看護師が鼻から管を入れる処置をするためベッドに来ました。
昼間、看護部長らしき人から、『もしかしたら』と言われていて、
『そうなると苦しい』とも言われていたのでした。
暗い中での処置のためか、なかなか管がうまく通りません。
私は何度も繰り返される看護師の手際の悪さに、
痛いのと息ができない苦しさとで『止めてくれ』と訴えました。
替わった担当医も同様で、管はうまく挿入されません。
心が折れました・・・。
嘔吐から今まで弱音を吐かず、苦しさに耐えてきた私の心はもう限界だったのでした。
私は泣きながら、今までどれだけ耐えてきたかを訴えました。
(入院すれば楽になれる)と思っていたのに状況は悪くなるばかり、
管を入れても楽になるとは思えなかったのでした。
それでも落ち着きを取り戻した私は担当医に素直に従ったのでした。
こうしてイレウス管が挿管されました。
しかし、これはまだまだ続く苦しみの序の口に過ぎないのでした。