{92}第8章 病気(4-1.復活)
翌朝、様子を見に来たもう一人の担当医師に私は
『管を外して欲しい』と頼みました。
そして、医師から『執刀した担当医が休みであり、今日は無理だ』と言われた時、
またしても私の心は折れたのでした。
後で来た父に、私は涙ながらに
『私は(癌になったことが)悔しくて堪らない』
『起き上がるためには管をどうしても外さないと無理だから、
先生に外してもらえるよう頼んで欲しい』
と訴えたのでした。
癌を知ってからも気丈で冷静だった私の取り乱しように、
父は驚いてすぐさま医師のもとへ頼みに行ってくれたのでした。
イレウス管を抜き取られた瞬間、
長い苦しみからようやく解放されると思いました。
『ハァー』と大きく溜息をついた私は、
やっとの思いで地獄から抜け出すことができたのでした。
私は自力でトイレへ行く覚悟を決めていましたので、同時に排尿のための管も外してもらったのです。
とは言っても、起き上がるまでにはかなりの時間がかかりました。
激痛に耐えながら少しずつ体をずらしながら傾け、ベッドの端に脚を下す反動を利用して上半身を起こすことになんとか成功しました。
たったこれだけのことに、私は肩で息をしていましたが達成感でいっぱいでした。
ベッドを起こしてもらうためナースコールで来た看護師は、
私の早過ぎる行動と昨日とはうって変わったやる気に驚いていました。
その後も私はできるだけベッドにもたれて座り続け、
もちろんトイレには一人で立ち上がって歩いて行きました。
(同室の皆さん、ありがとう)
と、昨日の悔しさを感謝の気持ちで振り返える私がそこにはいました。