{119}最終章 おひとりさま(2-2.父 逝く)
父は週1回の家事援助に加えて、週二回デイサービスを利用するようになった。
行き帰りは車での送迎、体操や器具を使って体を動かすことができ、昼食にお弁当も頼めた。
他に入浴サービスもあって、
私は
『個浴で、男性スタッフに背中を流してもらえて頭も洗ってもらえるよ。
家で風呂沸かさんでええし、帰ったらご飯食べてすぐ寝れてええんとちがう』
と言って何度も利用を勧めたていた。
しかし、父は
『あれは風呂の無い人が入るんや』と言って頑なに嫌がった。
自転車が乗れなくなったことで行動範囲が狭くなり、気軽に外出できる機会が減った父にとってデイサービスのある日は楽しみであり、心待ちにしていたのだった。
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年に数回は必ず二人で墓参りに出かけていた。
杖無しでは歩行が難しくなった父との外出は時間に余裕を持って行動しなければならず、また最短ルートの行動は昼食の場所も毎回同じで窮屈であった。
それでも、自然の中、芝地にある墓に出かけることは良い気分展開であり楽しかった。
実家へ送った時、父の階段を上る仕草に驚愕した。
脚に力が入らないのか手摺に掴まった腕の力を支えに上がっていく。
(団地の三階までいつもこのようにして上っていたのだと・・・)
更に、買い物帰りには荷物がある。
常々、『エレベーターの無い団地だから階段が上がれなくなったら住めなくなる』と父に言っていたが、(いよいよ時間が無くなってきた)と私は思ったのだった。
そして、【二度あることは三度ある】が起こった。