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私がFP(ファイナンシャルプランナー)になった理由

{118}最終章 おひとりさま(2-1.父 逝く)

 大工であった父は過去2回仕事中に大怪我をしていた。

 一度目は柱と歩板の間に体が挟まって入院。
その後リハビリをしたが頸椎の損傷が完治せずに本人にしか感じることができない程度の後遺症が残った。

 二度目は二階の足場から転落。
運よく資材の上に落ちたことがクッションとなったが左太ももの大部分の筋肉を断裂した。
 そういう理由で、血行改善とリハビリを兼ねて整形外科と接骨院への通院が父の日課であった。
 免許の無い父はどこへ行くにもアシスト自転車だったので、左脚を怪我してからも無理して乗っていた。常々、不安を感じていた私は前輪が2輪のアシスト三輪車が脚に負担が少なく安定して乗ることができればと考え、父に勧めたのだった。
但し、『この三輪車に乗れなければ今後一切、自転車に乗ることを止める』という約束をしたうえでのことだった。

 購入にて間もないある日のこと、一緒に買い物に出かけた私の目の前で父が三輪車ごと転倒してしまった。
(絶対に転倒することが無い)と思っていた私はショックと三輪車が重くて父を助け出せないことで途方に暮れていた。
 そこへ天の助けとしか言いようがないタイミングで通りかかった二人の消防隊員が父を助け出してくれたのだった。

また、日曜日であるにもかかわらず転倒した場所が、休日診療をしている病院の真正面であったことも不幸中の幸いと言えた。

 これを境に、父は自転車無しの生活をせざるを得なくなった。