{128}最終章 おひとりさま(2-11.父 逝く)
四十九日に納骨をした。
霊園には私、父方母方双方の叔父、通夜葬儀で世話になった寺の住職が送迎バスで向かった。現地では墓購入からずっと担当してくれている〇〇さんが万事滞りなく納骨式を行ってくれた。
墓を作った当初、
『お父さん、これで(眠る場所がある)安心できたね』と冗談めかしに言ったら、
『うん、そうやな』と返事してくれたことがあった。
(男同士仲良くやってね。トミちゃんお父さん頼んだよ)と祈るばかりだった。
-----------------------------------------
夜、父の誕生日の7月とクリスマスの年二回訪れていたステーキハウスで一人食事をした。
奇しくも12月23日クリスマスイブの前日。
父がカウンター席は嫌だと言って、テーブル席でいつも向かい合って食事をした。
今日は父の写真と向かい合う。
夫婦二人で切り盛りしている店は父のお気に入りであった。
200gのステーキを平らげ、普段は発砲酒とあってビールグラスを何杯もお代わりしては『ご飯が食べられへんから』と言う私との毎度の攻防戦が繰り広げられた。
酔うと饒舌になる父は言いたい放題で、
『そんなんよそで言うたらあかんで』と私に諫めらては
『わかっとる』と更に続けた。
この様子を店の主人と女主人が笑って聞いていて、時々女主人が話題を変えてくれることもしばしばだった。
いつだったか、父がぽろっと言った
『わしが生きてて一番よかったことはおまえが産まれてくれたことや』
一方の私は『何を突然に』と戸惑い素直に喜べなかった。
今となっては私への父からの最期の言葉になった。
父を偲ぶことができた良い時間だった。
(お父さん、お疲れ様でした。 そして、ありがとうございました)