{127}最終章 おひとりさま(2-10.父 逝く)
団地に住むことで誰かしら近所の人と話ができた。
事故の後片づけでお世話になった人にあらためてお礼を言い、父が亡くなった事を伝えた。
また、事故の様子も詳しく聞けた。
階段の一段目からの転倒であり、向いの棟からよく見えたため発見が早かったということであった。
私は(外出先や部屋の中でなかったこと。僅かな段差であっても起こり得ることだった)と自分自身に納得させたのだった。
通夜、葬儀に連絡が着かなかったケアマネージャーが線香をあげに来てくれた。
以前、私の思いが父に伝わらないことで相談した時、
『できないことを父が自分で認めることは逆に気力を無くすことにつながる』と言われたことがあった。
保険会社の担当者も手続きの説明に来た。
こうして慌ただしく日々は過ぎて行った。
ほぼ片づけが終わり、父の遺品はアルバムと愛用の茶碗と湯呑、少しの道具だけだった。
後は業者に大きな家財道具の処分と原状回復作業を任せるだけにして、私の部屋に仏壇の準備が出来たタイミングで実家を後にした。
不思議ではあるが、仏壇があることで変えって部屋が明るくなったと感じた。
ようやく仏壇に遺骨を安置できた。