{113}第9章 自分の人生(3-6.気がかり)
後悔のないよう気になる事は解決しておきたいと思ったことにお墓があった。
田舎にある弟の墓参りには父が毎年お盆の帰省を兼ねて行っていた。
片道3時間かかる上に駅からタクシーに乗り墓地で待機してもらって、再びタクシーに乗って伯父の家へ行く。
墓参りはせわしいとしか言いようがなかった。
父も脚が不自由になってからは年々移動が大変になっていた。
兼ねてから(近くで永代供養をしてくれる墓地は無いか)とネットで調べていた私は、興味を持った霊園に『ゴールデンウイークに見学にいかないか』と思い切って父を誘ってみたのだった。
そして以外なことに、二つ返事で父はOKした。
神戸の山間にある霊園へは自宅からバスで最寄り駅へ、電車の乗換なし、到着駅から送迎バスが出ていた。長距離を歩く必要が無いうえ、アクセスが良く1時間足らずで行くことができた。
自然の中、鳥の鳴き声、木々のざわめき、虫や蝶が飛んでいる。
また、園内には微かに流れる音楽があり私はすっかり気に入ってしまった。
父も同じだったようで、墓地だけでなく墓石の種類などその場で決めた。
他に田舎の墓を移転するための手続きについても説明を受けた。
ただ、私は初めから合同墓を考えていたが、父がどうしても個別の墓を希望したことで予算がかなりオーバーした。
新墓に彫ってもらう言葉だけでなく模様、墓のフォルムまで私は拘った。
そのため、何度か墓地販売会社の事務所まで出向き要望を言った。
『こんなに、熱心なお客さんは少ない』と
今後ずっとお世話になる担当者に言われたのだった。