{52}第6章 阪神淡路大震災 (4-1.別居)
引っ越しの日は、田舎から父方の伯父夫婦も様子を見に来ていました。
私の両親は共に実の母親が姉妹である、いとこ同士の結婚でした。
だから離婚しているとは言っても、親類であることに変わりなく、伯父たちと母は正直気まずそうでした。
今回のことで、伯父は両親が復縁すると考えていたようで、父にどうするのか訊きました。
私は再び母と暮らすことなど想像もしていなかったので、世間的には伯父の考えが最もなことなのかと暗澹たる気持ちになったのでした。
意外なことに、父は『復縁する気はない』ときっぱり伯父に言ってくれました。
二週間とはいえ、避難所で母と一緒に過ごして、相変わらずの母の態度に苛立っていたことを思うと、当然なことだと私は胸をなでおろしました。
それから父と私は、この日初めて、伯父夫婦に離婚に至ったこれまでの出来事を話したのでした。
伯父は怒りを露わに、
『そういうことなら再び一緒になることはない』
と言いました。
また、父に対して
『おまえは馬鹿じゃ』
とも言いました。
伯母は
『実の子に、ようこんなことできるもんやて。信じられん』
と、私を慰めるように言ってくれました。
この時まで鈍感な私は、今までの自分に対する母の行いが、伯母が言うほど酷いものだとは思ってもみなかったのでした。