{107}第9章 自分の人生(2-5.一人暮らし)
その後、梅木先生を訪れることがないまま今日を過ごしている。
私がカウンセリングを受けた期間を振り返って思うことは、
人生とは本当に予測できないことの連続であり、
自分でも(こんな事があっていいものか)と、
人知を超えた何かしらを感じずにはいられない経験をした。
【禍福は糾える縄の如し】
本当に、昔の賢人は良く言ったものである。
「このまま減り続けたら無菌室に入らなければならなくなる」
こう主治医から、本気か冗談かわからないことを言われた私の白血球数は、
薬の服用を止めたにも関わらず正常値に戻ることはないままであった。
しかし、私の免疫力は私の言った通り自力で頑張っていた。
こうして、解き放たれた私の心と体は、みるみるうちに元気を取り戻していったのだった。
父との関係も、別居した当初は些細な事で呼びつけられていたが、それも時が経つほどに回数が減っていった。
また、私は自分の部屋の合鍵を父に渡すことをしなかった。
ある時、父に
『私と住んでいた頃はどうだった?』と訊いたことがあり、
『おまえが居れば便利だった』と正直に言われたのには、
『やっぱりね』
と呆れはしたが、不思議と腹は立たなくなっていた。
義理の叔母が言った
「一人で暮らさなければ私は死んでしまう」
「自分が幸せでなければ父に優しくなれない」
を私はこうして実感していった。