{58}第6章 阪神淡路大震災 (5-4.第二の決心)
それは、当時の私が考えられる限りの母への注意であり、願いだったのでした。
そして、これ以後、私は母と話すことも会うこともありませんでした。
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ここまで言って、私はずっと胸の内に閉じ込めていた想いを梅木先生にぶつけたのだった。
「先生、私はずっと強くて、優しくて、賢くありたいと頑張って来たつもりでした。・・・
でも、駄目でした」
と言うと、同時に涙が込み上げてきた。
梅木先生は
「あなたは言ったとおりになったじゃない」
「もう、十分にしてあげましたよ」
と言った。
私は首を左右に振って
「いいえ、私は酷い人間です。
母のためと言っておきながら、本当は厄介払いをしたかっただけなんです」
誰にも言ったことのない真実だった。
「私は人としての母が大嫌いです。
あれだけ可愛がっていた弟の墓も建ててやれない、口ばっかりの人。
あんな人とは、絶対に友だちにもなりたくない」
自分でも、なぜこんなことを言ったのか不思議だった。
これこそ、正真正銘の心の叫びだったのだろう。