{22}第3章 両親 (3-2.ペット)
私は弟のこともあり、(自分は元気でいられるだけ、恵まれている)と無意識に心のどこかで思っていただけでなく、頼りない親を持つことで自分が惨めにならないよう、他人から後ろ指をさされないよう頑張っていました。
その一つが、悩みがあっても、誰かに相談することなく本を読み、自ら考えて答を見つけだすことでした。
高校生の私は、元々勝気で口達者なこともあって、いつの間にか親に頼られるようになっていました。
中学に入学してからずっと制服のカッターシャツにアイロン掛けをしていたのが、『ついでだから』と言われて、母の作業服の上下と三角巾まで毎週末毎にアイロンを掛けさせられていました。
試験前であろうと関係なく、夜遅くまでかかっていても、アイロン掛けをしている私の傍らに作業服を置いて自分はさっさと寝てしまうといった具合です。
『深爪をした』と言っては、お米を研がされ、
『自分が洗い物をすると床が水浸しになる』と言っては、後片付けもさせられました。
母は父と自分の弁当を作ることと、夕飯の惣菜を買って並べるだけで、ほとんどの家事は私が引き受けていました。
更に神経質な母は、食器の洗い残しが少しでもあると容赦なく私にダメ出しもしていました。
父は食事に関しては何も言わない人でした。
惣菜は今のように豊富にスーパーに売ってなくて、近くの定食屋さんで作って貰い、食材が入っていた空になった発砲スチロールのトレーを洗い、器として料理を入れたものを買って来ていました。
そして、そのまま並べて家族で食べていました。
本当に簡単そのものです。
おかげで、食器洗いも三人分の茶碗と箸、父と母と自分の弁当箱ぐらいで済みました。
前にも言いましたが、我が家の食卓は時代の最先端を行っていました。