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私がFP(ファイナンシャルプランナー)になった理由

{4}第1章 弟 (3.自宅では)

 たまにですが、弟を自宅に連れて帰ることができた時もありました。
私はもう嬉しくて嬉しくて、テレビを見たり、絵本を読んだり、色紙を折ったりといろんなことをして一緒に遊びました。

 特に弟は歌が大好きで、『ア、ア~』と私の下手くそなピアノと歌に合わせて大きな声を出してご機嫌でした。
 母のお気に入りは『とんぼのめがねはピカピカめがね・・・』でした。
くりっとした大きな目の弟の歌だと言っていました。
私もこの歌が大好きで、今でも聴くと弟を思い出して泣いてしまいます。

 また、弟の大好きな遊びにティッシュペーパーをひたすら取り出すというのがありました。
手の届くところに置いてやると、動かせる左手でティッシュを一枚一枚引っ張る。
一箱全部空になるまで良く飽きずにしていました。
おかげで部屋中がティッシュで埋め尽くされていたことを思い出します。

そう言った私は、いつしか笑っていた。

 弟をバギーに乗せて散歩に出かけることもありました。
ご近所に、弟と同じ障がいを持つススムくんとそのお姉さんのハルちゃんのお母さんでアベさんというおばさんがいました。ばったり出会った時は立ち話につき合わされました。
何年か後に、ハルちゃんは看護師になって、ススムくんは亡くなったと聞きました。

そして、まだこの時の私はこの幸せな時間が長くは続かないとは知らなかったのです・・・。

 そう言って大きく深呼吸をした私は意を決して話を続けた。