{133}最終章 おひとりさま(4-1.母 逝く)
義理の叔母からの着信履歴があった。
普段から特に用事が無ければ電話をかけてこない事を考えると嫌な予感がした。
再度、叔母からの電話があり予感は的中した。
「いっちゃん。
行政書士(母の後見人)から電話があって、
『ケアマネージャーが娘さんに会いたい』って言うてるって・・・。
あんた、どうする?」
想定外のことに面食らってしまった。
「・・・。
ちょっと考えてからでもええ。
また電話するわ」
と言って電話を切った。
叔母からの助言で、『家族が中途半端に関わる事はサポートする側にとってもやり難いから、任せた以上は口出しなどせず全面的にお願いすればいい』というスタンスでいたので、まさかのケアマネージャーからの申し出だった。
(一度きちんと会ってお礼を言いたいし、これまでの母との事も話しておきたい)
と思った。
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叔母と待ち合わせた駅に行政書士が車で迎えに来てくれた。
私は男性ということしか知らなかったので(若いが面倒見が良くて、やさしそうな人だな)という第一印象だった。
着いたデイサービス施設は住宅街にある二階建ての家だった。
案内されて廊下を進むとダイニングが見えてきて、少し早めの夕飯が始まっていた。
(居てる!)
瞬時に体が硬直した。
ここに来るにあたって母に会う事が一番怖かった。
会った時とその後の自分が罪悪感を持たずにいられるかに全く自信がなかった。
(会うかどうかはその時任せ)と思って来たもののやはり勇気がなかった。