{132}最終章 おひとりさま(3-3.大叔母)
大叔母は終活にも余念がなかった。
訪ねる度に部屋にあった作品が減っていき『ほとんどを他人に譲った』と言って、お気に入りが一つ二つ残っているだけ。
後に知るのだが、大叔母はガンを患っていたのだった。
そして、『細かい手作業が以前のように出来ない』と言いつつ、
『でもこれが自分の使命と思っている』と言って
ボランティアで頼まれたバザーで販売するカードケースや小銭入れを最期まで作り続けた。
私も分けてもらったがどれも丁寧な作りで見事なものばかり。私には絶対に作れないクオリティであった。
大叔母がホスピス病棟に入院したので叔父夫婦と見舞いに行った。
病棟でのクリスマス会の写真や甥の子と孫の写真がベッドサイトに飾られていたと思う。
『ここでの最長入院記録をつくる』と言っていた通り、記録をつくって亡くなった。
八十九歳だった。
葬儀はかつて同居し、看取った二人の甥とその家族、叔父夫婦、母の妹二人と私。
マンションの隣人、行きつけの喫茶店の常連客仲間、ずっと担当してもらったヘルパーなど親族以外に多くの人々が参列した。
また、『故人が喜ぶから』と言ってあのカードケースが弔問客に配られた。
四十九日の法要に行った叔父夫婦と私に喪主である甥(兄)より『大叔母が公正証書遺言で母たち四兄弟姉妹にお金を残していて渡したい』と言われた。
それは(母の分は私に渡すように)という内容でもあった。
固辞する私たちに甥から『故人の遺志だから受け取ってもらわないと困る』と強く言われたこともあり、有難く頂戴したのだった。
帰り道、叔父夫婦に私は
『このお金は、(大)叔母ちゃんから私への(母の最期をお願いねって)気持ちだと思う。だから、それまで預かって置くことにする』と言って決心した出来事だった。