{121}最終章 おひとりさま(2-4.父 逝く)
翌日も叔父は病院に来てくれた。
救命救急センターの医師から
『変わらず予断を許さない状態だが、安定している』と説明を受けた後、
ようやく父への面会ができたのだった。
ベットで口を大きく開けて眠る父の姿は頭に包帯、顔は打撲による内出血のため青く腫れ上がっていた。特に左半分が酷かった。
また、呼吸を助けるためのチューブの他にも幾重にも機器に繋がれいた。
その日は入院手続きもあり、紙おむつなど必要なものを持って私だけ夕方もう一度見舞った。
父の好きな演歌を録音したウォークマンを聞かせながら、
「お父さん、痛かったね。
もう頑張らなくてもいいからね。
私なら大丈夫だから心配しないでね」と語りつづけた。
すると、父の目から涙が一滴流れた。
(お父さんには聞こえているんだ)と思った。
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父は峠を越えた!
CT画像でも黒い出血部分が小さく薄くなっていた。
凄い生命力である!
だが、意識はこのまま戻らず寝たきりになることは間違いなく、
私は更なる決断を迫られた。
医師からか『延命措置を希望するか』と問われたのだった。
私は
『父は一度眠ると起こされるのを嫌がります。だから起こさないでください』と
即答した。
私にもう迷いはなかった。