{31}第4章 転機 (4-1.第一の決心)
私は、できる限り家にいる時間を短くすることに努めていました。
仕事帰りは、毎日のように同僚とお茶をして愚痴を言い合う。
カルチャーセンターで生け花や太極拳を習う。パソコン教室にも通っていました。
他には一人で映画を観て、外国人アーティストのコンサートにも頻繁に行っていました。
私には、それらの空間に身を置くことで、少しでも日常を忘れストレスを発散させることができる最高の時間であり救いでした。
母の体たらく振りは酷いもので、馴染みの定食屋の味に飽きてしまったのか、昼間はスパゲティ専門店で夜はスナックをしている店で、夕飯のおかずを作って貰うようになっていました。
母は仕事帰りにそこへ立ち寄っては、コーヒーを飲みながら料理の出来上がるのを待ち、おかずの入ったタッパーを持ち帰るという具合です。
脂っこい洋食ばかりでしたが、父は文句も言わず我慢していました。
父の弁当も作らなくなり、父は仕方なく夕飯の残りを持って行っていました。
私が珍しく夕飯を共にしていた時、父が突然、食卓をひっくり返して、とうとう不満をぶちまけました。
それは、弁当が腐っていたというものでした。