{63}第7章 迷い道(2-3.束縛)
母が居た頃は、私の帰りが多少遅くなっても父は何も言いませんでしたが、二人で暮らすようになってからは、私が『帰って来るまで眠れない』と文句を言うようになりました。
私が十時過ぎに帰宅しようものなら、八時就寝の父には遅いということであり、いい歳した社会人の娘に対する父の言い分はエゴそのものとしか、私には思えませんでした。
たまの外出の時は
『何時に帰ってくるんや』とは言っても、
『ゆっくり楽しんで来いや』とは決して言ってもらえませんでした。
まさに父の愛情は、私を自分の傍から離さず縛り付けることだったのです。
次第に私は外に出て楽しむことより、一人家で過ごす楽しみを選ぶようになったのでした。
それは、父との衝突を避けることができた反面、もともと出不精だった私を更に自分の世界に閉じ込める結果となりました。
私はこうして自分でも気付かぬうちに、どんどん自分を追い込んでいったのでした。