{13}第2章 いっちゃん(4-2.期待)
小学校六年生になったばかりの私は、大好きな少女マンガの影響もあって、テニスをやってみたくて仕方がありませんでした。母が某有名私立女子中学校に行けばテニスができるというので、すでに決められていた進学塾に通うことになりました。
ただ一人特進クラスに選ばれた私は国語、算数、理科、社会の四科目をほとんどマンツーマンで勉強していましたが、たまに他の生徒と一緒に勉強することもあり、唯一それが楽しかった。
秋のあるお祭りの日、近くに夜店が並んでいるのを塾から何気なく見ていると、一緒に塾で勉強していて今日休んでいる同級生が、浴衣を着て楽しそうに歩いている姿が目に入ったのです。
その時、(こんなに勉強してまで中学に行きたいのか?)と思ってしまったのです。 塾通いが忙しくなり、珠算教室、ピアノのレッスンを休んでいたことや、仲の良い友達と別れての進学に対して、急に興味が無くなってしまったのです。
何より我が家の経済状況を考えた場合、(そんなに無理をしなくても良いのではないか。)と常々考えていたこともありました。
受験を止めると決めてからは、それはもう大変でした。
通っていた進学塾は新設で実績を作るために、私にかなり期待していました。塾長には何度も説得されましたが、一度進学することに冷めてしまった私は、反発するばかりでいう事を聴きません。最後の頃には、塾長から責められていたこともあり、一刻も早く辞めたい一心でした。
しばらくして、塾長が辞めたことを母から聞かされ、
『あんたの我儘のせいでこうなったことを忘れなさんな』と言われ、責任を感じたことを今も覚えています。